
材料は「錫」という金属です。日本ではほとんど採掘されておらず、マレーシア・タイ・インドネシア・中国などから輸入しています。錫の地金(インゴット)は35〜45キログラムの重量で「1丁」という単位で扱われています。
錫の溶解温度は約230度で、都市ガスでも容易に溶かすことが出来ます。
錫地金を鍋で溶かし、ドロドロになった錫(湯と呼びます)を、流れや
すく斜めにした鋳型に柄杓でそそぎ込みます。
しばらくしてナカゴをはずし、水に浸した刷毛で少し冷やし、固まったら型から取りだします。この時点でも、ま
だかなりの熱を持っています。
それから、錫を注ぎ込む鋳口からはみ出した余分な錫を切り取ります。鋳型は製品の種類や形によって、大小様々あり、セメン
ト、土、金属などから作られています。
鋳込んだ丸い形のものは、ろくろを使って削りながら形を整える作業をします。こけしを削るのと同じようなものです。
ろくろの行程は、錫器の製作
の中心行程に当たります。鋳肌はザラザラして堅いのですが、かんなを使って削ると、錫本来の美しい輝きが引き出されます。花瓶のように細長く大きなものや
一つの型で鋳造できない物は、上下別々に表面や内側をきれいに削って、上と下を接合して仕上げます。
漆塗りの工程が終わった後のつや出しの仕事もします。品物の丸みや削る厚さなどは、全て経験豊富な職人の「勘」です。鋳肌を削り取る鉋・形を整 える鉋・仕上げの鉋は、それぞれ使い分けられます。艶を出すために、昔から使われている「ムクの葉」「トクサ」なども使います。艶の色を生かした製品で は、この工程で仕上がりになるものもあります。
ろくろで出来上がったものに模様(絵)を入れます。インクは漆またはエナメルを使います。
これを硝酸液に浸すと、描かれた部分はマスキングされ
ているので、他の部分だけが腐食し梨地状態になるのです。季節によっても腐食の度合いの変わる微妙な行程です。
絵の浮き加減を確かめ、水洗いしてから、黒
や朱色などの漆を塗り込んで、拭く行程を繰り返すことで、描いた部分が光り出し、模様が浮き上がって落ち着いた感じに仕上がります。